【考察】今更見た「君の名は。」感想と考察
全く見る予定はありませんでしたが、とある事情から今更「君の名は。」を見ることに。個人的に結構面白かったのでその感想を今回は書いていこうと思います。まだ見ていないという人はネタバレ注意です。
私がこの映画を一言で表すなら「糸」でしょうか。キーであった組み紐や歴史、人との縁そうしたものの多くが、「糸」の一言で表されると思います。
物語の一つの焦点となってくる彗星も夜空に描く一つの線として「糸」ととらえることができます。
なぜ瀧くんは三葉と入れ替わる事になったのか
一つの疑問として残るのは、何故瀧くんは三葉と入れ替わることになったのかということです。
三葉視点からすれば神社の娘としてのしがらみや田舎の閉塞感からくる都会へのあこがれがありました。現に、「来世は東京生まれのイケメン男子になりたい」という旨の発言をしています。
一方で、瀧くんは三葉と入れかわる理由が描写されていません。瀧くんの視点から三葉に入れ替わる理由が見えないのです。ゆえに、この入れ替わりには明確な根拠が示されていないのです。
こうした設定はそのものとして受け入れてその上で考察をするべきという指摘もありますが、この設定は映画の根幹に関わるので少し考えてみたいと思います。
演出としてのまっさらさ
この問題を考える際、まずは映画として考える必要があります。つまり、瀧くんは観客にとってどのような視点か、ということです。
前半では三葉と瀧くんの入れかわりが、中盤は瀧くんが三葉を探すシーン、後半は瀧くんが三葉のために奮闘するシーンが描写されます。
映画の構造上ダブル主人公という形ではありますが、一貫して視点は瀧くんに寄っています。ならば、瀧くんは観客にとって自身の投影先といえるのではないでしょうか。つまり、瀧くんに視点を合わせて物語に入り込むわけです。
そうした演出面を考慮すると、観客が瀧くんに視点を合わせるにはなるべく瀧くん自身の設定をまっさらにする必要があります。ゆえに、瀧くん自身が三葉に入れ替わる理由を持たないようにすることに意味を持つわけです。
災害と運命
彗星による大災害はやはり3.11を思い起こさざるを得ません。
映画では1200年前三葉の故郷に隕石による大災害が起こっています。その隕石によるクレーターが宮水の湖となっているわけです。
三葉の家系では女性が代々誰かと入れ替わる経験をしていることが描写されています。
ここからは想像の域にも入りますが、こうした三葉の入れ替わりの流れは1200年前に遡るのではないかと考えています。1200年前、宮水家の女性が災害により最愛の人と死別した経験があり、そうした悲しい思いを子孫にしてほしくない。そうした思いと、それから1200年後のティアマト彗星による大災害が繋がり、代々宮水家の女性が誰かと入れ替わる経験をするのではないかと。しかし、1200年という月日は人には長く、そうした思いは段々とねじれてきます。そのねじれが三葉と滝くんに3年という時間のねじれにあらわれたのではないでしょうか。
また、入れ替わりの記憶は互いに少しずつ残ると描写されますが、隕石被害の話が終わった後記憶がなくなります。キーとなるシーンは御神体の場所で三葉と滝くんが互いに会うことができたシーンです。あのシーンで入れ替わりが終わり記憶をなくしてしまいますが、あのシーンは世界線が移り変わったことを意味するのではないかと。世界線がうつり終わった時点で最愛の人が隕石被害から免れることが確定し、入れ替わりの意味が結節します。そのため互いの不思議な経験が起きたことそのものが消えていったのではないかと考えられるためです。
こうした災害を踏まえた運命は三葉と瀧くんの入れ替わりに必然性をもたらすわけです。
ラストに関して思うこと
個人的に一言、最後はしっかりと「三葉」、「滝くん」と呼び合ってほしかったです。
ラスト、二人が大人になって巡り合った時に「君の名は」と言ってタイトル回収がなされます。しかし、そのシーンを見るとモヤっとするもるものが。
ベタではありますが、互いに
「三葉」
「滝くん」
と頬に涙を伝わせながら呼び合って欲しいなと感じました。あの時点では互いに名前を忘れてはいましたが、そこで不意に名前が出て互いに呼び合うのが個人的にはスッキリしたかな、なんて。
とはいえ新海誠作品ということもあり、ラストは出会えずに終了ということもあったかもしれなかったので、一安心というところでしょうか。
全体的な評価としては非常に面白かったです。巷では難色を示す意見もありましたが、やはり話題になっただけの面白さを感じることができます。私も少し考察を述べましたが、こうした考えを友人と話して盛り上がるのもいいかもしれませんね。
こういう恋愛ものはまたいいなと。ここまでとは言いませんが、世の人々もそれぞれの出会いがあって縁で結ばれる、そうした一人一人の話があることを改めて感じさせられます。私はそうした誰もが持つその人だけの話を聞くのが好きですし、その点から歴史を学んでいるというのもあります。
今の私はこうした恋愛関係とは全く疎遠ですし、そこに興味があまりありません。しかし、いつか運命の人が現れてこの意識を劇的に変えられたい、そんなことを思う映画でした。
(こういう恋愛ものとか見るとアフターストーリーが気になる質なので、そのあたりの補完が欲しいなぁ)